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2021年3月16日

中高年の健康戦略(29) 「変化と恒常性(2)」富士通川崎病院 顧問 行山康

 健康診断のデータにおける変化と恒常性ということで話をすすめております。
 レントゲン検査では胸のレントゲン検査が日本では肺結核のスクリーニング検査としておこなわれてきました。肺ガンの増加に伴って、早期発見に役立つのではないかと期待されましたが、実際にはあまり役立ちませんでした。以前の写真とくらべてその変化をみることはしばしばおこなわれ、診断の参考になります。しかし、それでも目に見えるような肺ガンの診断率の向上はのぞめませんでした。
 また結核患者は減少してきていることから、健康診断に胸のレントゲンを撮ることはやめる傾向となっております。少ない線量とはいえ、不必要にX線を浴びることは発ガンの遠因になるからです。
 胃のレントゲン検査は異常を指摘されたら、60歳を過ぎておれば、積極的に精密検査である内視鏡検査をうけるべきでしょう。日本人に多いガンで、早期発見が役立つ数少ない悪性腫瘍です。
 尿検査では蛋白,糖,潜血に関しては成人,老齢者を問わず健康診断として行う事が多いです。蛋白に関しては、慢性腎炎の初期段階がチェックされる可能性があります。しかし症状のない初期段階であれこれと検査をすすめても早期治療が成功する保証は全くないので、結局気にする必要はないのです。
 糖に関しては糖尿病のスクリーニング検査として有用で、特に食後の尿糖陽性に関しては,真正の糖尿病の可能性が高いので,精密検査が必要です。
 潜血というのは尿に赤血球が混じっているかどうかを測定する検査です。潜血反応が陽性ですと、いわゆる血尿があるということになります。排尿したとき真っ赤な尿が出る場合を肉眼的血尿、尿の潜血反応でわかる程度の血尿を顕微鏡的血尿といいます。顕微鏡的血尿はおもに慢性腎炎の所見を示すことになりますがそれ以外の原因の事もおおく、特別のことがなければあまり気にすることはありません。
 最近は健康診断で便の潜血反応を調べる事が多いです。女性では死亡率一位になっている大腸ガンのスクリーニング検査です。60を過ぎておられるかたに検査が陽性に出た場合には、ぜひとも精密検査である注腸検査(レントゲン検査)とか大腸内視鏡検査をうけることをすすめます。大便を2回,提出してもらうことがありますが統計的に2回調べたほうが、よりスクリーニング検査の効率があがるという理由によります。
 血液検査として腫瘍マーカーを調べる事があります。腫瘍マーカーが陽性だからといって、がんがみつかることはまずありません。またこの検査が陰性だからといって、絶対にがんがないとも言い切れません。すなわちあいまいさを残した検査なのです。ただしガンとして治療をうけたひとがその後のガンの活動性を見るという場合には有用な検査です。例えば,大腸ガンで腫瘍部分を切除すると、その腫瘍マーカーであるCEAという検査値が急激に減少します。

 ざっと健康診断における検査値の意味を述べてきました。からだは常に変化しており、一瞬たりとも同じということはありません。正常値というのは大まかな基準にすぎないのです。
 小生は健康診断が健康維持にどのくらい意味をもつものかを研究した事があり、健康を維持する事と健康診断を受ける事は関係ないのではないかと疑った時期もあります。それはひとのからだは日々に変化しているので,本当の姿を捉えることは困難でなかろうかという疑念からです。また多少、データの変化を早めに知って対処することにどれだけの意味があろうかと。
 実際に、職場で倒れたり,急に不幸の転帰をとったりした人たちを調べると健康診断結果に問題がなかったかたたちが半数ほどを占めています。健康診断で問題があった人には治療上、或いは健康管理上にどこか足りないところがあったと検討する余地があります。健康診断で問題がなかったひとでは、原因は不明ということになります。
 健康維持は自分自身の健康感を大切にして、健康診断結果ばかりに頼ることはやめましょう。豊かな健康感をもつことは休養と食事、運動,社会生活の根幹である仕事がバランスよく,生活がまわっていることにつながります。OBになればさらに積極的に健康な生活スタイルを確立することが可能でしょう。医療関係者まかせにしないで、自分自身の健康スタイルを築くことをお願いいたします。
(この項終わり、以下次号)



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