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2021年5月12日

中高年の健康戦略(34) 「打たれ強く」富士通川崎病院 顧問 行山康

 タイトルの「打たれ強く」は中高年になっても「打たれ強く」生きよう、とか「打たれ強く」ありたい という意味です。
 何に「「打たれる」か、それは当然、老いとか老化によってということです。或いは老いとか老化がもたらすさまざまなトラブルに対してです。老いとは抗しがたいものですが、それに伴うトラブルに、いちいち落ち込まないようにしようというのが本稿の主旨です。
 
 中高年ではしばしば老化が原因となってさまざまな不調があなたを襲います。例えば便秘と下痢、転倒による外傷、尿漏れ、失禁、あるいは尿閉(前立腺肥大などで尿が出なくなること)などもろもろの若いころには、おもいもしなかったような体の不調に見舞われます。
 当直などをしていると救急の外来に便秘で苦しむ方が訪れる場合があります。急性の症状になると吐き気などを伴ってひどく苦しいものです。尿閉の場合もおなじで、やはり冷や汗をたらたら流す事態となります。こんなことは若いころには絶対に経験しないことですから、そんな事態に遭遇した衝撃は大きいとおもわれます。
 またなんでもないところで転倒します。歩行中に躓くというようなことは日常的におこることで、それも若いころはどうってことなく、からだのバランスで対処したことです。
筋肉に力の余裕があり、平衡感覚もしっかりしているからです。ところが老化がすすむと何でもない平らなところでばったりと倒れ、骨折するなどということもあるのです。こんなことが起こっても必要以上に落ち込まないで、もっと気をつけようと決意を新たにしましょう。年をとった、情けないなあなどと思う必要はありません。運動能力、反射神経、筋力などは確かに低下しているでしょうが、それなりに気をつければよいことなのです。

 精神面では物忘れ。小さなこと、大きなこと色々と忘れます。家庭内の約束ごとならばそれほどのトラブルにならないかもしれません。しかし、銀行でお金の算段をするとか、会合の主催者なのに当日は忘れていたなどということになると被害は身内だけにとどまりません。そこで「おれも年だな、もうこういう活動はやめよう」とはおもわないようにしましょう。忘れることがあっても、打たれ負けて身を引いてゆくのは戦略として正しくありません。
 電話番号、ひとの名前、出来事、地名など忘れるものには事欠きません。テレビをみていてこの俳優の名前は?とどうしても思いだせないこともあるでしょう。自宅の電話番号を思い出せないと少し重症かもしれませんが、よく電話をかける近い友人、親戚などでもしばらく疎遠にしておれば、忘れてしまうのは当然で、むしろ常にメモなどして対処法を考えておくことが大切です。

 ある医師の友人は学会へ出かけてホテルへ泊まり、備え付けられた金庫に大切なものをしまいました。外出しようとして、財布を取り出すつもりで金庫をあけたところなんと出てきたのは歯ブラシと歯磨きチューブ。財布はスーツのポケットにあったそうです。友人はそれ以来、「ボケ日記」を書いて、折にふれてぼけ具合を書き留めています。
 自分がよく犯す失敗はいつのまにか同じ本を2冊買っていること。フィクションでは「ルパンの消息(横山秀夫著)」「名もなき毒(宮部みゆき著)」、また新書関係では「裁判官爆笑お言葉集(長嶺超輝著)」「「心の悩み」の精神医学(野村総一郎著)」など。本棚に2冊づつで並んで自分のほうを睨んでいます。一回読んでくれればよいよといってるかのごとくです。古い本を買うときは大変、用心深くなりました。

 老いのむちに打たれることはしばしばあるわけではありません。それにもかかわらず、打たれたときは小さな経験でも、必要以上に大きく感ずるものです。例えば物忘れにしても、人より長く生きてきているのだから、いつの間にか頭の中に色々なことを沢山詰め込んでいます。 だからひとつやふたつ忘れるのは当たり前なのです。
 異常な行動とかちょっとした不調が、ずっと続くわけではありません。生活時間全体のわずかな部分なのです。そう考えて対処すると、気が楽になります。
 冷静になって考えると、体が衰えて機能が低下するのは当たり前。精神も衰えて、気力、記憶力、思考力が衰えるのも当然。大事なことは衰えてゆく自分のからだ、精神をしっかりとみつめるまなざしです。
 からだと心の衰えに対し、自分の内側からあきらめてゆく力に抗して、「打たれ強く」なりましょう。社会的にも「後期高齢者医療制度」のように老化にやさしくなく、むしろ「打たれ強さ」がためされるような環境変化がすすんでいます。
 そうした場合、自分の心とからだの在り様をしっかりとみつめる「まなざし」こそ大切とかんがえます。このまなざしは自分が生きて立ってこの世にしっかりと存在していることを確認するまなざしです。ひとによっては介護疲れとか、闘病に苦しむ自分をみつめるまなざしかもしれません。それでも「打たれ強く」なんとかやってきているでしょう。
 大多数のかたはすでに無意識に実践していることかもしれませんがこの「まなざし」で毎日、「打たれ強く」挫けずに、過ごしてゆきましょう。
(この項終わり、以下に続く)



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